殺虫剤について

市販殺虫剤(エアゾール)について

薬局やスーパーやコンビニエンス・ストアに行くと、店頭にさまざまな『害虫駆除の殺虫剤』が並んでいますが、害虫防除に従事している私は、職業病と言って良いほどこれらの「成分」と「効果」を読みあさってしまいます。

>害虫の「ノックダウン」とは?

テレビコマーシャルでも、最近薬剤への抵抗性を持ったゴキブリに効くと謳った殺虫エアゾールスプレーをしきりに宣伝しておりますが、しかし説明内容をよくよく読んでみると「致死する」では無く、「ノックダウン」という言葉を使っているのが殆んどです。

じつは、私どもペストコントロールオペレータ(害虫防除士)にとって「ノックダウン」という言葉は「致死」では無く、あくまで『仰天状態、すなわちノックダウン状態でしかない』という認識を持っています。

ちなみに、殺虫剤の「ノックダウン」を専門的に解説すると…。

『中央ノックダウン時間(median knock-down time, KT50)とは、生物の半数が仰天(ぎょうてん)するに要する時間。薬剤の即効性の指標』
すなわち致死ではないので蘇生する場合もあるということです。

市販殺虫剤普及によって、害虫は殺虫剤に抵抗性を持つようになった。

また現在市販されている、エアゾール式の殺虫剤の殆どの主成分が「ピレスロイド系殺虫剤(合成ピレスロイド系の殺虫剤も含む)」といって過言では無いでしょう。

この『ピレスロイド系殺虫剤』とは、天然の除虫菊から抽出した「ピレトリン」の成分とほど近い殺虫成分の化学記号を持っていますが、この『ピレスロイド系殺虫剤』は、過去30年ほど前より、日本のみならず世界各国で、お手軽で安全なことから、ご家庭でも頻繁に使用されて来ました。

それは素人さんによるエアゾール式殺虫剤での駆除でしかありませんので、やはりノックダウン状態、死にぞこないの害虫も出てくることは否めません。

この死にぞこないの害虫が元気を取り戻し、交尾を繰り返して行くとどうなるのか…?

なんと、害虫の二世代、三世代、四世代………と小進化を繰り返し、とうとう殺虫剤に対して抵抗性を持ったスーパー害虫が生まれてしまうのです。

事実、沖縄でも、市販殺虫剤では全く致死しないゴキブリ、すなわち『スーパー・ゴキブリ』や『スーパー・トコジラミ』が増え続けています。

最近の殺虫剤のテレビコマーシャルを見ても「この薬剤を使うと完全に致死にいたる」という文句では無く「瞬間にノックダウン」などの言葉を使っているようですが、殺虫剤を噴射した瞬間に、ゴキブリが苦しみだして引っくり返っても、死にぞこないのゴキブリが元気を取り戻し、繁殖を繰り返し続けるのです。

このように、効く新薬が登場しても、害虫たちもDNAレベルで小進化を繰り返しながら、いずれは、この新薬に対する抵抗性を持つことは言うまでもありません。

まるでイタチゴッコですよね…。

しかし私達ペストコントロール・オペレーターは、プロの害虫防除施工士として、このように殺虫剤抵抗性害虫をどのようにして駆除していくのか、日々研究を重ねながら奮闘しているのです。まさしく闘いそのものですね…。
今日は難しい話で失礼しましたm(_ _)m

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